窓の外、紫陽花が泥にまみれて泣いている。
今年最初の招かれざる客が、南の海から這い上がってきた。
気象台の連中はそれを「台風」と呼び、俺はただの「厄介ごと」と呼ぶ。
湿った風が、ビルの隙間で錆びたナイフのように口笛を吹いていた。バーボンのグラスに、生ぬるい結露が滴る。
六月の雨は、いつだって余計な記...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
窓の外、紫陽花が泥にまみれて泣いている。
今年最初の招かれざる客が、南の海から這い上がってきた。
気象台の連中はそれを「台風」と呼び、俺はただの「厄介ごと」と呼ぶ。
湿った風が、ビルの隙間で錆びたナイフのように口笛を吹いていた。バーボンのグラスに、生ぬるい結露が滴る。
六月の雨は、いつだって余計な記...
雪の白ではない。
それは、すべてを拒絶し、すべてを反射する「無」の色。
中世の裁断を引き継いだこの白いスーツは、
肉体という枷を縛り上げる、優雅な拘束衣だ。
袖を通すたびに、問いが生まれる。
「俺がこの服を着ているのか、それともこの白が、俺という形を繋ぎ止めているのか」
重厚なラペルは沈黙を守り、
...
窓辺にのこされた 淡いパステルのきれはし
それはいつかの あかるい五月の雲の色
六月の雨は いま、ガラスの向こうで
小さな涙の雫を いくつもならべている机のすみに眠る 古びたオルゴール
ねじを巻けば かすれた音のつぶが
ひとつ、ふたつと 薄暗い部屋にこぼれて
失われた季節の 遠いひびきを連れてくるそ...
青いあじさいの毬(まり)のなかに
いつからか しずかに眠っていたのは
だれが落とした ため息だったろう
窓をたたくのは 銀の、細い、雨の指先五月がのこしていった あかるい風のうつわを
にわか雨が ひそやかに満たしてゆく
ぼくの部屋の 古びた机のうえ
ひらかれたままのノートは 白く、にじむばかり消えか...
言葉の嵐は去り、液晶の光は絶えた
お前たちが必死に捏造した正義も
強者を呪ったルサンチマンの叫びも
すべては冷え切った宇宙の、一瞬の瞬きにすら満たない裁く者も、裁かれる者もいない
ただ、絶対的な静寂がお前の存在を削り落としていく
お前が命がけでしがみついたその「自我」は
最初から、どこにも存在してい...