都市(からだ)の防衛網は、すでにガタがきている。
エントランスの監視員(はっけっきゅう)は、かつての半分も残っちゃいない。
あとの連中は、昨日までの激務に嫌気がさして
予告もなしにどこかの闇へ消えちまった。赤い川の流れは相変わらずだが、
街を守る警備車両のサイレンは、もうどこからも聞こえない。
かつ...
都市(からだ)の防衛網は、すでにガタがきている。
エントランスの監視員(はっけっきゅう)は、かつての半分も残っちゃいない。
あとの連中は、昨日までの激務に嫌気がさして
予告もなしにどこかの闇へ消えちまった。赤い川の流れは相変わらずだが、
街を守る警備車両のサイレンは、もうどこからも聞こえない。
かつ...
真夜中、体温計が38度を示した。
熱は嘘をつかないが、この身体も嘘をつく。
俺の血液銀行は倒産寸前だ。
白血球(やつら)はどこへ消えた?好中球は逃げ出した。
リンパ球はストライキ中。
俺の静脈は、たった数人の老兵が守る
人影のない防衛線だ。「さあ、来いよ」
喉の奥でくすぶる細菌(マフィア)どもに、
...
放課後の校舎裏は、いつも湿った土と
誰かが隠れて吸った安い煙草の匂いがした。
俺たちは、使い捨てのライターのように
火を灯す場所を探しては、空回りしていた。「遠くへ行こう」
隣で彼女が言った言葉は、
排気ガスに混じって消えた。
約束なんて、撃ち尽くした後の空薬莢(からやっきょう)ほどにも
価値がない...
薄汚れた雑居ビルの屋上、
午前二時の風は、十六歳のナイフみたいに冷たかった。
俺と相棒は、百円のライターでマイルドセブンに火をつけ、
星も見えない街の灯りを見下ろした。「いつか、ここを出ていけるか?」
相棒が煙を吐き出しながら尋ねる。
俺は答えなかった。
答えは、ポケットの中で錆びついた鍵みたいに、...
窓の外は、すでに藍色の闇が降りてきております。
お盆の上に残されたのは、透明な葛に包まれた、一粒の餡。
それは、どれほど隠そうとしても透けて見えてしまう、私の本心のようでございました。私はその冷たい塊を、一息に飲み込みます。
喉の奥を滑り落ちる滑らかさは、逃れられない運命の感触に似ております。席を立...