河もにうつる夏の花火 ――秘密の場所によせて
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/07/12 11:07:30
ひらかれた窓のむこう 夜の風が冷たく渡り
パステルの画のやうな雲は やがて闇に消えてゆく
ぼくはひとり薄明のなかで 古い日記を閉じ
あの日きみと息をひそめた秘密の場所を弔(とむら)ふ遠い街のざわめきも絶え 消え入る音楽のやうに
静かな河のおもてに ひとつのひかりが零れ落ちる
それは音もなく引き裂かれ...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
ひらかれた窓のむこう 夜の風が冷たく渡り
パステルの画のやうな雲は やがて闇に消えてゆく
ぼくはひとり薄明のなかで 古い日記を閉じ
あの日きみと息をひそめた秘密の場所を弔(とむら)ふ遠い街のざわめきも絶え 消え入る音楽のやうに
静かな河のおもてに ひとつのひかりが零れ落ちる
それは音もなく引き裂かれ...
あおい海辺の きらめく砂のうえで
マリーのわらい声が 風にゆれていた
あのまぶしすぎる 太陽のひかりが
すべてを狂わせてしまう そのまえにあなたの濡れた髪と 白いドレスのすそ
夏の日のまぼろしは いまもとおくで
わたしのなかに しずかに息づいている
せかいがどんなに つめたくてもあの乾いた砂の あつ...
ひとりが夜の暗い坂をあゆむとき
そのあしおとはただ闇に消えてゆく
けれどわたしのてのひらに灯る火は
ただひとりの孤りだけのものではなかった世界が強いる冷たい不条理の風に
わたしが静かに「否」とつぶやくとき
とおくの窓にもおなじ青い火がともり
かなしみは分かちあう光へと変る人はみな同じ病をわかちあふ旅...
ひとりが
ひとりのままで
暗い坂をあゆむとき
そのあしおとは ただ夜のなかに消えてゆくけれど みつめてほしい
わたしのてのひらに灯る
ちいさな けれど確かな いかりの火をわたしが「否」とつぶやくとき
かなしみは わたしひとりのものではなくなる
とおくの窓にも おなじ青い火がともるのだ人はみな おなじ...
おもひでのはる はるかなること
わたしの手は空を掴むすべもなくて
ただ風のなかでふるへてゐる壁のむかうには なんのしるしもない海
わたしたちは砂粒のやうにちいさく
沈黙のあひだを ひそかに息づいてゐるのだ空しいきざしに みちびかれるままに
あるひは岩を押しあげるシシュポスのやうに
おもい荷をかかへて...