水平線を引きちぎって
白波が喉元まで這い寄ってくる
パシフィックワールド――
この巨大な鉄の箱の中じゃ、良心なんてのは
安物のバーボンより早く蒸発しちまうカジノのルーレットが回る音は
誰かの人生がすり潰される悲鳴に似ている
ディーラーの無表情な指先が
運命という名のカードを、冷酷に弾き飛ばす俺はデッ...
水平線を引きちぎって
白波が喉元まで這い寄ってくる
パシフィックワールド――
この巨大な鉄の箱の中じゃ、良心なんてのは
安物のバーボンより早く蒸発しちまうカジノのルーレットが回る音は
誰かの人生がすり潰される悲鳴に似ている
ディーラーの無表情な指先が
運命という名のカードを、冷酷に弾き飛ばす俺はデッ...
坂の街が吐き出した溜息が、石畳を濡らしている。
長崎港、松が枝。
かつて「鶴の港」と呼ばれたこの場所は、
今じゃ、誰かの夢を切り裂く、鋭い嘴(くちばし)のようだ。 「オランダ坂」を転がり落ちた未練が、埠頭に溜まっている。
大型客船の白い船体は、闇夜に浮かぶ巨大な墓標。
出航を告げる汽笛が、...
錆びついたクレーンが、重たい空を釣り上げている。
ここは夢の終着駅、あるいは絶望の始発港。
潮風は安物のバーボンのように、喉の奥をヒリつかせた。かつて、この桟橋には華やかな香水の匂いが満ちていた。
今はただ、腐った海藻と、誰かが置き忘れた後悔の臭いがするだけだ。
大型客船の汽笛が、遠くで獣の呻きのよ...
この部屋の鍵は
とっくの昔に 錆びついた
開けたままのドアから
夜風が 思い出を攫(さら)っていく来るものは拒まない
迷い込んだ猫も
行き場を失くした 嘘つきな女も
俺と同じ 迷子の種族だ差し出されたグラスに
注がれるのは 安物の慈悲
それを飲み干せば
胸の傷口が 少しだけ熱くなる「帰れ」と言うほど...
街の喧騒を遠くに聞く、古びた事務所。
入り口のドアに鍵が掛かることはない。
「来る者は拒まず」
それが、この場所の静かな掟だからだ。琥珀色の液体がグラスの中で揺れ、
使い古された椅子が、主を待っている。
迷い込んだ者、
行き場を失った真実、
あるいは、語られることのない孤独。この部屋を訪れる者は、
...