虚蝉 雨の降る 遠い町で
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/08/11 08:20:24
遥かな町に 雨がしずかに降っている
雨はしずかに 灰色の屋根に降っている
僕はひとりで 古い窓から外を見て
お前の残した 薄い殻を見つめているあの夏(懐かしい夏)の 光のなかで
お前の歌った 小さな歌はどこへ行ったか
しずかに しずかに 雨は降りつづけ
すべては遠くの 川へ流れて行ったのか窓には 冷...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
遥かな町に 雨がしずかに降っている
雨はしずかに 灰色の屋根に降っている
僕はひとりで 古い窓から外を見て
お前の残した 薄い殻を見つめているあの夏(懐かしい夏)の 光のなかで
お前の歌った 小さな歌はどこへ行ったか
しずかに しずかに 雨は降りつづけ
すべては遠くの 川へ流れて行ったのか窓には 冷...
はるかな町に 雨がしづかに降つてゐる
瓦のやうに灰色の 見知らぬ屋根たちの下
僕はひとりで 古い窓から外を眺め
おまへののこした うすい殻を手のひらに載せてゐるあの夏の日 光のなかで啼きしきつたおまへの
小さなうたは いまはどこへ行つてしまつたか
この濡れた舗石(しきいし)のうえを 流れる水のやうに...
月の眼窩から滴る、白い影見上げる盲目の月もまた、その静寂を破り、異形を覚醒させます。逆さに垂れ下がる影天の白眼の、ひび割れた輪郭から、どろりとした白濁色の糸が、蜘蛛の糸のように幾条も垂れ下がる。その糸の先端には、首のねじ切れた、着物姿の女のような影が、逆さ吊りのまま揺れている。降下する虚無女の影は、...
僕は今、ひとり夜の海岸に突っ立って、ただもう、ぼんやりと海を眺めているので足元で、真っ黒な海水が、まるで狂った巨大な蛇のようにのたうち回っている。それは僕の胸のなかの、醜い自意識の渦そのもののようで、見ていて吐き気がする。激しくぶつかり合い、泡を噛み、お互いを裏切りながら崩壊していく波の群れ。それだ...
青い小さなともしびが
ひっそりと 野原のすみにともる。
それは、あなたがのこしていった
わすれな草の、かなしい瞳。風はわたしたちのあいだを通り、
かすかな記憶のにおいをはこぶ。
光のなかにとけてゆく日々を、
わたしはただ、じっとみつめていた。あつい夏の日の ひるさがりに、
あなたは遠い雲の峰をゆびさ...