あわい葡萄色の夕暮が セーヌの川面を染めてゆく
春の嵐の名残りの風が 冷たく水を揺すぶるとき
僕は ただひとりの寂しい個影(かげ)となり
きみの来ない川辺の古本市(ブキニスト)の横にたたずむ外套のポケットの奥 指先が触れる一通の未開封の手紙
きみが遺(のこ)した最後の言葉を 僕はまだ読むことができな...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
あわい葡萄色の夕暮が セーヌの川面を染めてゆく
春の嵐の名残りの風が 冷たく水を揺すぶるとき
僕は ただひとりの寂しい個影(かげ)となり
きみの来ない川辺の古本市(ブキニスト)の横にたたずむ外套のポケットの奥 指先が触れる一通の未開封の手紙
きみが遺(のこ)した最後の言葉を 僕はまだ読むことができな...
激しい雨が ステンドグラスを叩き割らんばかりに
春の嵐は 昏(くら)い聖堂のなかにまで吹き荒れる
僕は ただひとりの寂しい個影(かげ)となり
白い花びらに埋もれた きみの棺のまえに立ちつくす冷たくなつたきみの胸元には 一通の未開封の手紙
僕が放つた想いは もう二度と読まれることはない
やがて厳かに ...
激しい雨が 古い教会(チャペル)の窓を叩いてゐる
暗い梢は 狂つたやうに身をよじり
咲いたばかりの白い花びらを むしり取り
泥にまみれた石畳のうえに 散らしつづけてゐる僕は ただひとりの寂しい個影(かげ)となり
冷たい堂のすみで 祈るやうに立ちつくす
どこからか あえかなオルガンの音がきこえる
それ...
あらい風が 青い梢を揺すぶつてゐる
ひそやかに咲いたばかりの 花びらが
僕の帽子のうえに また肩のうえに
ちぎれた手紙のやうに 散り急いでゐる僕は ただひとりの寂しい個影(かげ)となり
あかるい乱気流のなかに 立ちつくす
きみと歩いた あのなつかしい並木道は
いまはもう 遠い追憶の底に沈んでひとはみ...
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どこかで 古い手回しオルガンが鳴つてゐる
坂道のあちらから またこちらから
ひとびとは うすい影をひきずりながら
夕暮のなかに しづかに消えてゆくそれは いつか僕が夢にみた街のやうに
しろい石畳が やさしく濡れてゐる
とほい空には あわい葡萄色の雲
だれもが なにかを忘れてきた顔をして窓のともし...