月明りの酒場とサックス
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/08/16 17:38:02
窓ガラスを叩くのは、雨か、それとも名残の風か。
琥珀色のグラスに沈む氷が、音もなく溶ける。店の隅、ジュークボックスが息を吐く。
デュークのピアノが静かに夜の扉を開き、
そして、コルトレーンのテナーが低く泣く。
『In a Sentimental Mood』。音の波が煙草の煙を切り裂いていく。
感傷(...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
窓ガラスを叩くのは、雨か、それとも名残の風か。
琥珀色のグラスに沈む氷が、音もなく溶ける。店の隅、ジュークボックスが息を吐く。
デュークのピアノが静かに夜の扉を開き、
そして、コルトレーンのテナーが低く泣く。
『In a Sentimental Mood』。音の波が煙草の煙を切り裂いていく。
感傷(...
今日だけは、すこし歩みをゆるめて、
あなたの心に、小さな日傘をひろげましょう。がんばることは、おやすみしていいのです。
雲が流れるのを、ただ眺めるように、
風が頬をなでるのを、ただ感じるように、
あなたの時間を、あなたのためだけに使いましょう。完璧でなくて、いい。
進まなくても、いい。
今日をただ、...
雪はしんしんと 古い硝子窓に降りつもり
汽車はただ 独りきりの私をのせて走る
いまも耳の奥にのこる あの哀しげな汽笛は
失はれた昭和の 夜のまぼろしだつたらうか眼を閉じれば そこはいつでも夢の国
あなたは昔のままの やさしい姿で佇み
何も言わずに 私の手を握りしめてくれる
そのぬくもりだけが いまの...
遠い雪の夜の 底からひびく汽笛の音(ね)は
まるで私をよぶ あなたの声のやうに切ない
私はひとり 青い寝台のくらがりのなかで
あたたかい幻につつまれるやうに 眼を閉ぢるガタゴトと震える 昭和の夜汽車のまどわく
窓のそとは はげしい白のあらしだつたらうか
けれど夢のなかで あなたはしづかに微笑み
私の...
汽笛がひとつ 暗い雪のなかに消えてゆく
それはもう 二度ともどらない昭和の夜
私はひとり 青い寝台(ベット)に身を横たへ
窓をたたく 白いまたたきを見つめてゐる凍てついた硝子窓のむこう また一つ
名もない駅のともしびが 遠ざかつてゆく
あのあかりのしたに かつて私の愛した
やさしい日々の 幻が佇んで...