Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



皐月の港、あるいは追憶の灯

五月の風は 塩の香りをはこんで
坂道をのぼり この静かな丘にたどりつく
白い十字架のむこう ひろがる港には
名も知らぬ船たちが わかれの汽笛をひびかせ
空の青に かすかな亀裂をのこしていくわたしは 錆びた鉄柵に手をかけ
遠い異国の名が刻まれた 石の肌をみつめる
かつてここで 誰かが抱いた郷愁(ノスタ...

>> 続きを読む


皐月の断章

五月の陽ざしは あまりに明るすぎて
窓枠に切りとられた わたしの部屋を
透きとおる 静かな水底のように沈ませる
風はときおり カーテンの裾を翻し
どこかへ わたしを連れ去ろうと誘うけれど……ああ あなたはもう この風のなかにいない
あのひ 雲雀(ひばり)の歌を聞きながら
...

>> 続きを読む


わすれられた車輪のうた

風のなかに だれもいない客車をひいて
銀のレエルは 光のなかへ 消えてゆく
青いあざみの花が 窓をのぞき
ひび割れた椅子に ひるねの影をおとす汽笛を鳴らしておくれ なつかしい声で
あの遠い 音楽のような 村のために
けれど 石炭の熱(いき)は やさしくさめて
機関車は ただ草原の波を わけてゆくどこ...

>> 続きを読む


風の旋律、光のパレット

萌黄色の波が 丘から丘へと あふれだし
わかくさの香りは 風の指先に ふるえている
陽炎のむこう 桃色の霞(かすみ)が たなびけば
汽車は 光の絵具で 縁どられた まぼろしのよう耳をすましておくれ あの遠い 鳥の声を
それは 見えない空の どこか高い場所で
だれもいない客車のために 歌われる 午後の...

>> 続きを読む


春の陽炎のなかで

野原のすみで 光の糸が もつれあえば
春の陽炎(はるひがえり)は ゆらゆらと 立ちのぼる
そこに だれもいないはずの 汽車がいて
銀色の吐息を 空に ほどいてゆく見つめれば 風景は 淡い水彩のよう
鉄の重みも わすれられた 古い切符も
みな 陽光(ひかり)のなかに 透きとおって
どこまでが 夢なのか...

>> 続きを読む





Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.