Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



静かな湖畔の宿にて

窓をひらけば あかるい五月の風が
銀色のさざなみを 部屋へと運んでくる
僕はしずかに 一冊の古い本を閉じて
まだ見ぬ明日の 夢のつづきを反芻する藍色の湖面に 映る雲の白さが
あまりに儚く あえかに揺れているので
僕はひととき 自分の名前さえ忘れて
透明な空気のなかに 溶けてしまいたいと思うしあわせは...

>> 続きを読む


湖畔の宿 ――記憶の淡い領土にて


窓をひらけば あかるい風の帯が
見知らぬ季節の つぶやきを運んでくる
僕はただ 藍色の湖面をみつめて
遠い日の約束のように 椅子に深く沈んでいるさざなみは 銀色の鱗(うろこ)をきらめかせ
古い手紙の 行間を濡らしてゆくようだ
昨日の僕が ここに置き忘れた言葉を
いまは名もなき 小鳥たちがついばん...

>> 続きを読む


五月の風のなかで

しづかな林の 木もれ日のなか
白い鈴が 一列に並んでゐた
それは風が吹くたび かすかに揺れて
誰にも聞こえぬ 幸福(しあはせ)の歌をうたふ五月の朝は あまりに透きとほり
私のこころは 硝子の器のやうに
あふれる光を こぼしてばかりいる
昨日までの哀しみを どこへ隠したのだらう青い葉の影に ひそんでゐ...

>> 続きを読む


勿忘草によせて

風のひかる うららかな昼
牧場のすみに 小さき碧(あお)のひと群れ
あかるい空のしたで ひっそりと
それは誰も知らぬ ちいさな夢の形をしていた私は手折ることをためらふ
その青が あまりに淡く あまりに脆く
時を止めてしまふやうに思はれたから
ちぎれた雲の ひとかけらみたいに貴方は言つた 「忘れないで...

>> 続きを読む


今日のお題 眠り姫は笑わない 或る古い物語へ

Ⅰ窓のそとは うすもも色のゆうぐれ
ひくく ひくく 風が鳴ってゐる
ぼくは 古い手帳を閉じて
あをざめた星が ともるのを待っているしづかな部屋の かげのなかで
眠り姫は けふもわらはない
その睫毛(まつげ)に ひかりがふれても
その唇(くちびる)に あしたの予感がゆれても姫はただ 失はれたものの名前...

>> 続きを読む





Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.