小さな窓のひそかな歌
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/06/11 17:39:41
うす桃色の風が 街をすぎてゆくのに
わたしは ちいさな部屋のなかにいて
カーテンのすきまから
ただ 雲のゆくえを眺めていただれかの呼ぶ声が きこえたような気がして
ふいに 胸がせつなく つめたくなる
ひとつの視線が ガラスの破片のように
わたしのやわらかな時間を 傷つけるからそっと 扉を閉めておこう...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
うす桃色の風が 街をすぎてゆくのに
わたしは ちいさな部屋のなかにいて
カーテンのすきまから
ただ 雲のゆくえを眺めていただれかの呼ぶ声が きこえたような気がして
ふいに 胸がせつなく つめたくなる
ひとつの視線が ガラスの破片のように
わたしのやわらかな時間を 傷つけるからそっと 扉を閉めておこう...
冷たい風が わたつてゆく
木々の梢を ふるはせながら
静かな湖畔の 水のうえに
あをい夕暮れが おちてくる大きな三日月が 映る水面は
まるで 硝子の鏡のやうに
ぼくたちの 遠いおもひでの
すべてを じつと みつめてゐるきみは どこかで きいてゐるだらうか
この さびしい 風のうたを
ぼくの こころの...
しずかな夕暮れの 風のなかに
ぼくらは み失った森をさがしてゐた
梢のあいだから こぼれる光は
淡いみどり色の つめたい涙のやうにかすかなせせらぎが 歌をうたってゐる
むかし誰かが 忘れていった古い歌を
きみは耳をすまし 優しくほほえむけれど
そのかげは もう夕闇に溶けはじめてゐるすべては うたかた...
あをい夕闇の すそをひいて
大きな三日月が かかつてゐた
それは まるで 銀のしづくのやうに
ひそやかに 空を わたつてゆく風は 梢を やさしくゆすり
わたしたちの むかしのものがたりを
だれもゐない 森の奥へと
そつと はこんで ゆくのだらうかきみのひとみの やさしい光
ぼくのむねの ひとすじのさ...
冷たい雨が、オフィスを兼ねた安アパートの窓を叩いている。
ネオンの灯りが、割れた硝子のように床へ散らばっていた。
机の上には、埃をかぶったバーボンのボトル。
そして、決して開けることのない、紫色の古いラベルの瓶。「ライラック・ワイン」お前はそう呼んで、悪戯っぽく笑っていたな。
あの春、街外れの古い樹...