Nicotto Town ニコッとタウン

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悲しみの遠景 —冬桜—

季節外れの狂い咲きだと
誰かが肩をすくめて通り過ぎる。
だが、凍てつく風に耐えるその花弁は
返り血よりも白く、静かだ。温もりを捨てた枝の先
掌にこぼれ落ちたのは
雪か、それとも散り際の火花か。報われることのない忠義のように
枯れ色の中に、一点の意地を置く。遠ざかるほどに、鮮明になる。
あの日、守れな...

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悲しみの遠景

氷の溶けきったグラスの底に
沈んだ昨日の残り香を
指先でなぞる。都会(まち)は
誰かの涙を飲み干しては
ネオンの飛沫を撒き散らす。背中の傷が疼くのは
過ぎ去った季節のせいではない。
ただ、遠ざかる背中を
見送る術を知らなかっただけだ。悲しみは
雨に洗われたアスファルトのように
鈍く、静かに
朝の光を...

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都会の夜の雨

酒場の窓は、青い夜の顎(あぎと)
泥にまみれた雨が、しんしんと降つてゐる。
僕のトレンチコートは、昨日よりまた少し
孤独な匂いを濃くしたやうだ。グラスの氷が奏でる、安っぽいチャイム、
誰を待つのでもない、ただ座ってゐる。
ネオンのサインは、壊れたフィルムのやうに
君の思い出を点滅させては、消す。愛だ...

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煙の向こう側

煙突から吐き出された灰色の煙が、
冬の鉛色の空に溶けていく。
あいつの最後のエールだ。
案外、さっぱりしたもんだ。待合室の自動販売機、
冷たいコーヒーの缶を握りしめる。
熱いのは炉の中だけで十分だ。焼却炉(ハコ)の中の熱気は、
あいつの背負っていた因縁も、
俺の薄汚れた過去も、
1200度の炎で、白...

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涙壺IV. エピローグ -砂の雨-

夜明けの空に、涙壺を投げた_
粉々に砕け散れ。
砂粒になった悲しみは、街を濡らす雨になる。俺はトレンチコートの襟を立て、
バーボンの香りを残して、
また、次の街へ歩き出す。涙なんて、飲んでしまえば、
ただの塩辛い水だ_

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