深夜二時のダイナー
回るレコードの溝には
昨日流したはずの涙が
こびりついている彼女が口を開けば
安物のジンはヴィンテージに変わり
立ち上る煙草の煙は
天使の梯子を形作る「奇妙な果実」が揺れるたび
街の輪郭は歪み
正義と悪の境界線は
降り出した雨に溶けていった耳に飾った白いガーデニア
それは戦場に咲...
深夜二時のダイナー
回るレコードの溝には
昨日流したはずの涙が
こびりついている彼女が口を開けば
安物のジンはヴィンテージに変わり
立ち上る煙草の煙は
天使の梯子を形作る「奇妙な果実」が揺れるたび
街の輪郭は歪み
正義と悪の境界線は
降り出した雨に溶けていった耳に飾った白いガーデニア
それは戦場に咲...
世界がすべて偽物だとしても、
この渇きだけは、本物だと信じたかった。積み上げた嘘の城が、朝日を浴びて音を立てて崩れる。
俺は砂の山に膝をつき、
自分が空っぽだったことを、ようやく受け入れた。「救い」とは、真実に辿り着くことじゃない。
つき続けた嘘の重みに耐えかねて、
ただ、正しく絶望することだ。空虚...
雨は、古い郵便ポストの錆をなぞるように降り続いている
俺の指先には、もう宛名の消えかけた一通の封筒切手は貼られていない
誰にも届けるつもりはなかったからだ
それとも、届けるべき相手が
もうこの街のどこにもいないからかバーボンの安酒で湿った喉を震わせ
俺は独り、闇に向かって吐き捨てる
「配達不能」とい...
雨の午後は、古いタイプライターの音がよく響く。
デスクの引き出しの奥、
バーボンの空き瓶と錆びたライターに挟まれて、
その手紙は、まだ息をしている。宛先は、もう地図にはない街の
二度と開かないはずの扉。
切手は貼られていない。
届けるべき相手は、去年の冬、
煙霧の匂いだけを遺して、風になった。「元気...
トレンチコートの襟を立てて
煙草に火を点ける
今夜の風は、死人の吐息より冷たい川面に浮かぶのは
白から薄桃色へと色褪せた
花びらの遺体だ「綺麗だ」なんて言葉は
とうにどこかへ置き忘れてきた
ただ、潔く散るその形(なり)に
少しだけ、俺の過去を重ねるだけさ満開の嘘に酔うやつらは
もうここにはいない
騒...