Nicotto Town ニコッとタウン

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錆びた錨と嘘の雨

空が泣いているなんて
安っぽい詩人の真似をする気はない
これはただの 湿った物理現象だ波止場に打ちつける雨は
すべてを洗い流すほど 潔くもなくて
ただ 俺の安いトレンチコートに
消えない染みを 増やしていくだけ「待っていろ」と言ったのは どいつだったか
律儀に待っている自分に 吐き気がして
俺は 錆...

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琥珀の中の残骸

重いドアを押し開けると、安っぽいジャズと、
誰かが吐き出した過去の匂いが混じり合っていた。
カウンターの隅、止まり木に腰を下ろし、
指先で氷を転がす。「春の星屑を、一杯」
冗談のつもりで頼んだが、
バーテンは眉ひとつ動かさず、
琥珀色の液体をショットグラスに注いだ。グラスの底で、砕かれたクラッシュア...

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硝子の破片と、春の塵

夜風が少しだけ、湿った土の匂いを運んできた。
冬の残党が吐き捨てた最後の溜息に、
微かな甘い毒が混じる。
それを世間は「春」と呼ぶらしいが、
俺の肺には、ただ重く沈殿するだけだ。見上げれば、都会の煤に汚れた夜空。
輝きを忘れた星どもが、
砕け散った硝子の破片のようにバラ撒かれている。
「星屑」なんて...

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泥水の奇跡

ピレネーの冷たい風が、コートの襟を叩く。
マッサビエルの洞窟は、
誰かの罪を飲み込んだ後のように口を開けていた。羊飼いの娘は、幻を見たという。
俺たちの世界じゃ、そいつは「イカれてる」か
「見ちゃいけないものを見た」かのどっちかだ。
だが、彼女が指先で土を掘り返すと、
そこから溢れ出したのは血じゃな...

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件名なし

暗がりに火を灯したのは、マッチ一本の頼りない光だった。
低く這うようなラルゴが、古びた酒場のドアを叩く。
突然、嵐_
追い詰められた男の足音か、あるいは引き金を引く指の迷いか。
沈黙と咆哮が交互に喉を焼く、安いバーボンよりもきつい導入だ
雨はまだ降り続いている。
路地裏に捨てられた記憶のように、重く...

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