連作詩『月よりの使者』
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/09/21 14:47:14
I. 青い手紙銀色の馬車が 夜の梢をすぎてゆく
誰も気づかない しづかな時刻(とき)に
窓をひらいて待つてゐる 僕のために
見知らぬ國の あおい手紙をたづさへてそれは君の まだ知らない物語
透明な記憶の底に 沈んでゐたもの
使者はそつと 机のうえにそれを置き
冷たい指先で 僕のまぶたを閉ぢてゆくあし...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
I. 青い手紙銀色の馬車が 夜の梢をすぎてゆく
誰も気づかない しづかな時刻(とき)に
窓をひらいて待つてゐる 僕のために
見知らぬ國の あおい手紙をたづさへてそれは君の まだ知らない物語
透明な記憶の底に 沈んでゐたもの
使者はそつと 机のうえにそれを置き
冷たい指先で 僕のまぶたを閉ぢてゆくあし...
かすかな青いひかりをあつめて
しづかに 夜の窓辺に降りたつものがある
それは遠い記憶のやうに
誰も知らない言葉を運んでくる君が昼のあいだに忘れてゐた
ちひさなため息や 傷ついてゐたこと
それらをすべて やさしい影につつみ
冷たい銀の指先で そつと撫でてくれる「ねむりなさい」と声がする
風の吹かない部...
どこからか届いたかすかな便りのように
今夜、私の窓辺に銀色の光が降りてくる
それは遠い、誰も知らない国からの
冷ややかな、けれど優しい眼差し。あなたは静かに夜の底を歩いてきた
青い星たちのあわい影をあつめて
その薄い外套の裾からは
葡萄の香りのような、古い記憶がこぼれる。「忘れてしまったのか」と
風...
I. 宿命(おとづれ)青い夜の底から、しづかに、
ひとつの、冷たい火がのぼる。
それは、僕たちの古い家を、
そのやさしい影ごと、焼きつくすために。あゝ、あれは僕の夢を喰ふ月。
銀の、するどい、あやしい刃。
見なれた窓も、ひそやかな庭も、
みな透きとほる灰に、かへってゆく。さよなら、僕が愛した小さなも...
Ⅰ. 緒論:言語的重力(Linguistic Gravity)の定義とその喪失言語とは、単なる情報の伝達媒体ではない。それは主体の内面を引き裂き、存在の深淵を凝視するための「精神の重石(おもし)」であった。その自意識の泥濘を言葉によって削り出し、張り詰めた静寂を詩行として結晶化させた時代、言葉には確...