遠い雪の夜の 底からひびく汽笛の音(ね)は
まるで私をよぶ あなたの声のやうに切ない
私はひとり 青い寝台のくらがりのなかで
あたたかい幻につつまれるやうに 眼を閉ぢるガタゴトと震える 昭和の夜汽車のまどわく
窓のそとは はげしい白のあらしだつたらうか
けれど夢のなかで あなたはしづかに微笑み
私の...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
遠い雪の夜の 底からひびく汽笛の音(ね)は
まるで私をよぶ あなたの声のやうに切ない
私はひとり 青い寝台のくらがりのなかで
あたたかい幻につつまれるやうに 眼を閉ぢるガタゴトと震える 昭和の夜汽車のまどわく
窓のそとは はげしい白のあらしだつたらうか
けれど夢のなかで あなたはしづかに微笑み
私の...
汽笛がひとつ 暗い雪のなかに消えてゆく
それはもう 二度ともどらない昭和の夜
私はひとり 青い寝台(ベット)に身を横たへ
窓をたたく 白いまたたきを見つめてゐる凍てついた硝子窓のむこう また一つ
名もない駅のともしびが 遠ざかつてゆく
あのあかりのしたに かつて私の愛した
やさしい日々の 幻が佇んで...
あんなに雪が降つてゐた 北へ向かう夜に
私はただ ひとつの失つた名前をよんでゐた
狭い二段寝台の あかりを消した暗闇で
切なさは すきま風のやうに胸をぬけてゆくいまはもう消えてしまつた あの汽車の青いカーテン
誰もいない通路の かすかな白熱灯のひかり
すべては昭和の 遠い幻だつたのだらうか
私の涙の...
ひとつの旅が ここで終わる
尖った三角屋根が 薄桃色の夕暮れを突き刺し
小鳥のさえずりのように かすかな合図が聞こえる
プラットホームは 静かに夜の匂いを吸い込んでいた遠い異郷の町を いくつも掠めてきた
あの大いなる青い影――寝台列車が
大きな息を吐きながら レールの上に身を横たえる
窓の向こうには...
優しくひとつの朝がひらかれるとき
僕は見失う、僕の歩むべき細い道を。
日見峠の古い坂に立ちこめる霧は、
まるで誰かのささやきのように淡く、白い。消え去った旅人たちの足跡を隠し、
みどりの木の葉を濡らす、しめやかな涙。
追憶のなかでだけ鳴りひびく馬鈴の音が、
このぼんやりとした景色のどこかに、眠ってい...