原罪のスタウログラム
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/08/20 21:22:13
白夜は遠く去り、
むせ返るような真夏の太陽が、
うだるアスファルトと泥を容赦なく照りつける。
その陰鬱な大気の底で、
一本の桜が、狂ったように花を開いていた。季節を知らぬ白き花弁。
それは神の慈悲か、それとも悪魔の嘲笑か。
道行く者は誰ひとり足を止めず、
ただ重い足取りで、罪の澱(おり)のような影を...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
白夜は遠く去り、
むせ返るような真夏の太陽が、
うだるアスファルトと泥を容赦なく照りつける。
その陰鬱な大気の底で、
一本の桜が、狂ったように花を開いていた。季節を知らぬ白き花弁。
それは神の慈悲か、それとも悪魔の嘲笑か。
道行く者は誰ひとり足を止めず、
ただ重い足取りで、罪の澱(おり)のような影を...
私たちは並んで あの夕月を見上げてゐた
季節外れの 寂れた宿の窓辺辺(まどべ)から
かすかな硫黄の匂ひと 微かな星のまたたき
おまえの横顔は その光のなかに確かにあつた大勢のなかにゐても 私たちは独りだつた
けれどその孤独は 少しも寂しくはなかつた
おまえの息づかいが 夜の闇の深さに溶けて
二人の沈...
季節のすぎてしまった温泉地の
古びた宿の だれもゐない廊下
夜の闇は おどろくほどに深く
私の足音だけが ひそやかに消えてゆく昼のざわめきは もうどこにもない
古びた障子の隙間から
あのかすかな硫黄の匂ひと
冷たい夜気(やき)が そつと忍び込んでくる窓の外には ただ一箇(ひとつ)の夕月と
またたくこ...
大勢の人びとのざわめきのなかで
私はただ 夕月と微かな星を仰いでゐた
それで十分だつたのだ
私の孤独は これほどに静かに透きとほり風が運ぶ かすかな硫黄の匂ひは
山の呼吸のやうに 私を包む
だれも私の沈黙には気づかない
それでよかつた 私は私のままでゐられた夜のはじまりの つめたい空気のなか
星のま...
かげろふのようになめらかな峰のあいだに
夕月は白く 寂しい光をこぼしてゐる
おまえはなぜ そんなに静かなのか
風にちぎれた雲の片端(かたはら)を追ふやうにむかしの夢が そこらの草に宿り
木立のかげに 青い影がのびてゆく
私はひとり 冷たい石に腰を下ろし
遠い海原(うなばら)の気配を胸にきくおゝ たそ...