虚蝉(うつせみ)によせて
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/08/11 08:25:10
そして 僕は また かへつて來る
あの灼けた夏の午後の 影のなかに
おまへは そこに かたちをのこして
光る風のなかで じつと だまつてゐるかつて 歌は ここを通りすぎ
すきとほる羽音が 空の青さに吸はれた
いまは もう だれも問ふものもない
草の茎のうえの ひそやかな抜け殻よおまへは ひとつの季節...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
そして 僕は また かへつて來る
あの灼けた夏の午後の 影のなかに
おまへは そこに かたちをのこして
光る風のなかで じつと だまつてゐるかつて 歌は ここを通りすぎ
すきとほる羽音が 空の青さに吸はれた
いまは もう だれも問ふものもない
草の茎のうえの ひそやかな抜け殻よおまへは ひとつの季節...
遥かな町に 雨がしずかに降っている
日暮れのはざまに 雨はしずかに降っている
薄紫の 屋根の向こうの暗い空
お前の殻は 手のひらでほのかに光るあたりはしずかに 夜のなかへと沈んでゆく
ともる灯りは 雨の向こうににじんでゆく
あの夏(懐かしい夏)の 光のなかで
お前の歌は 夜のしじまに消えてゆく窓には...
遥かな町に 雨がしずかに降っている
雨はしずかに 灰色の屋根に降っている
僕はひとりで 古い窓から外を見て
お前の残した 薄い殻を見つめているあの夏(懐かしい夏)の 光のなかで
お前の歌った 小さな歌はどこへ行ったか
しずかに しずかに 雨は降りつづけ
すべては遠くの 川へ流れて行ったのか窓には 冷...
はるかな町に 雨がしづかに降つてゐる
瓦のやうに灰色の 見知らぬ屋根たちの下
僕はひとりで 古い窓から外を眺め
おまへののこした うすい殻を手のひらに載せてゐるあの夏の日 光のなかで啼きしきつたおまへの
小さなうたは いまはどこへ行つてしまつたか
この濡れた舗石(しきいし)のうえを 流れる水のやうに...
月の眼窩から滴る、白い影見上げる盲目の月もまた、その静寂を破り、異形を覚醒させます。逆さに垂れ下がる影天の白眼の、ひび割れた輪郭から、どろりとした白濁色の糸が、蜘蛛の糸のように幾条も垂れ下がる。その糸の先端には、首のねじ切れた、着物姿の女のような影が、逆さ吊りのまま揺れている。降下する虚無女の影は、...