霧が、古い石造りのホームを重く包み込んでいた。
街灯の光は濁り、行く先を失った亡霊のように宙を彷徨っている。雨は静かだ。
だが、執拗にトレンチコートの肩を叩き、
隠しきれない過去の綻びを暴こうとする。改札の向こう、遠ざかるテールランプ。
赤い光が、濡れたアスファルトに血のような尾を引いた。火をつけた...
霧が、古い石造りのホームを重く包み込んでいた。
街灯の光は濁り、行く先を失った亡霊のように宙を彷徨っている。雨は静かだ。
だが、執拗にトレンチコートの肩を叩き、
隠しきれない過去の綻びを暴こうとする。改札の向こう、遠ざかるテールランプ。
赤い光が、濡れたアスファルトに血のような尾を引いた。火をつけた...
錆びついたレールが
霧の奥へと消えていく
そこは時間の止まった、雨の駅舎トレンチコートの襟を立て
冷たい風に身を任せる
街灯の光が、一瞬だけ
孤独な横顔を照らした誰も来ない
誰も待っていない霧は、吐き捨てた言葉を隠すように
街の明かりをすべて飲み込んだ
雨粒が、古い鉄の屋根を叩く
まるで過ぎ去った日...
煙るプラットホームに、境界線など存在しなかった。
錆びた鉄路の匂いと、湿った空気。
追い越していくのは、行き先のない冷たい風だけ。改札を抜ける風の音が、
遠い日の記憶のささやきに似ているのは、
すべてを包み込むこの霧のせいだろうか。ずぶ濡れのトレンチコートが肩に重い。
胸の奥にしまい込んだままの言葉...
フェンスの向こう側は
見慣れた星条旗がはためく異国
オイルの匂いと
湿った海風が混ざり合うこの街で
俺はウィスキーの瓶を傾ける夜の静寂を切り裂くのは
誰かが置き去りにしたジュークボックス
流れるのは「レフト・アローン」
あの泣き濡れたアルト・サックスが
行き場のない孤独を代弁する「一人にさせてくれ」...
視界を遮るものは、何ひとつなかった。
あるのは、見渡す限りの焦土と、黒く燻った絶望の残骸だけだ。
かつて街だった場所は、神がぶちまけた灰皿のように、
ただ無機質な「ゼロ」の地平へと成り果てていた。その焼け野原のど真ん中に、ポツリと、その親子は立っていた。逃げ場のない陽光の下で、剥き出しになった親子。...