Nicotto Town ニコッとタウン

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〒郵便  配達されない手紙

午前3時。バーボンのグラスが、空になった俺の心みたいに冷たい。
テーブルの隅、埃をかぶった黄色い封筒。
宛先は「霧の彼方、あるいは死んだはずのあいつ」。
切手は貼った。住所も書いた。
だが、この街の郵便夫は、真実(トゥルース)を運ぶのには少しばかり臆病すぎる。煙草の煙が、天井に愛の言葉を描いては消え...

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〒郵便  配達されない手紙

死んだ女に手紙を書く。
そんな滑稽な儀式を、僕は今夜も律儀に繰り返している。
グラスの縁にこびりついた安酒の匂いと、
お前の好きだった、あの安っぽい石鹸の香りが混ざり合って、
吐き気がするほど、部屋は静かだ。「拝啓」と書く。
それだけで、僕は自分の心臓を針で刺したような気分になる。
お前はもう、郵便...

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〒郵便  配達されない手紙

雨の午後は、古いタイプライターの音がよく響く。
デスクの引き出しの奥、
バーボンの空き瓶と錆びたライターに挟まれて、
その手紙は、まだ息をしている。宛先は、もう地図にはない街の
二度と開かないはずの扉。
切手は貼られていない。
届けるべき相手は、去年の冬、
煙霧の匂いだけを遺して、風になった。「元気...

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散花の行方

古びたバーの曇ったガラス越し
湿り気を帯びた風が、舗道を急いで通り抜ける。
去る者は追わず、逝く者は語らず。
それがこの街に流れる、無言の作法だ。公園のベンチに残された、消えかけた残り火。
その微かな光が失われる前に、
ひらりと、薄紅の欠片が路面に落ちる。
桜だ。美しく散るという言葉さえ、ここでは空...

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硝子の雨と残り花

トレンチコートの襟を立てて
煙草に火を点ける
今夜の風は、死人の吐息より冷たい川面に浮かぶのは
白から薄桃色へと色褪せた
花びらの遺体だ「綺麗だ」なんて言葉は
とうにどこかへ置き忘れてきた
ただ、潔く散るその形(なり)に
少しだけ、俺の過去を重ねるだけさ満開の嘘に酔うやつらは
もうここにはいない
騒...

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