Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



But Beautiful


煙草の紫煙が琥珀色のバーボンに溶ける頃、シャーリー・ホーンの掠れた歌声がスピーカーから零れ落ちた。
ここは外の雨音だけが世界の全てのような、港町の外れにある寂れた酒場だ。



ジュークボックスが息を吐くように、
彼女は哀愁を囁く。
Love is funny, or it's sad, or it's quiet...
まるで、すべてを見透かした夜の魔女のように。
カウンターの片隅で、
俺は冷めきったグラスを弄ぶ。
窓ガラスを伝う雨粒は、
ネオンの赤と青を滲ませて、
この街の嘘みたいに安っぽい哀しみを映し出す。
扉のベルが鳴り、誰かが入ってくる。
振り返る必要なんてない。
コートの襟を立て、タールと雨の匂いを連れたその客は、
かつての俺自身か、あるいは過ぎ去った幻影だ。
ここは誰もが傷を舐め合う場所。
夢の残骸と、男たちの懺悔が、
ジャズの旋律に溶けていく。
美しい嘘でも構わない。
シャーリーが紡ぐ旋律が、
今夜だけは、この荒涼とした心をそっと抱きしめてくれるから。_

#日記広場:日記




Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.