河もにうつる夏の花火4
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/07/12 11:13:26
Ⅰ
だれも知らない草の葉の
そのかそけき囁きのひびく処で
ぼくらはそっと息をひそめてゐた
夕闇のなかに風がそよぎだすのを
だれも知らない草の葉の
そのかそけき囁きのひびく処で
ぼくらはそっと息をひそめてゐた
夕闇のなかに風がそよぎだすのを
遠い街のざわめきをよそに
ちひさな雲が夜の隅に迷ひこむ
きみの横顔はかすかに匂ひ
ぼくの心は千々に震へてゐた
ちひさな雲が夜の隅に迷ひこむ
きみの横顔はかすかに匂ひ
ぼくの心は千々に震へてゐた
そのとき 静かな水のおもてに
ひとつのひかりが零(こぼ)れ落ちた
それは音のない遠い花火の
かなしい追憶のはじまりのやうに
ひとつのひかりが零(こぼ)れ落ちた
それは音のない遠い花火の
かなしい追憶のはじまりのやうに
Ⅱ
あかいひかりが あをいひかりが
水面(みなも)を滑るやうにひろがっては
またたくまに闇へと還ってゆく
流れる雲の影のやうに はかなく
あかいひかりが あをいひかりが
水面(みなも)を滑るやうにひろがっては
またたくまに闇へと還ってゆく
流れる雲の影のやうに はかなく
きみは何も言はずにただ見つめてゐた
ひらかれては消えゆくその花の影を
ぼくの手のひらを吹き抜ける風は
いつか失はれるものたちの冷たさをおぼえて
ひらかれては消えゆくその花の影を
ぼくの手のひらを吹き抜ける風は
いつか失はれるものたちの冷たさをおぼえて
さやさやと鳴る夜の草むらのなか
ぼくらはここで何を待ってゐるのだらう
過ぎ去った日の あの一瞬のきらめきを
ぼくらはここで何を待ってゐるのだらう
過ぎ去った日の あの一瞬のきらめきを
Ⅲ
もうすべては夜の底へと沈み
暗い河の水だけが ただ流れてゆく
ぼくらの秘密の場所には
冷たい風と 草の匂いだけがのこされて
もうすべては夜の底へと沈み
暗い河の水だけが ただ流れてゆく
ぼくらの秘密の場所には
冷たい風と 草の匂いだけがのこされて
いつかぼくがこの場所を忘れても
あのちぎれた雲のゆくえを忘れても
夏の夜の あの短いまたたきは
だれに告げることもなく そこにありつづける
あのちぎれた雲のゆくえを忘れても
夏の夜の あの短いまたたきは
だれに告げることもなく そこにありつづける
さようなら ぼくのやさしい面影よ
風にちぎれて消えた あのあざやかな幻よ
風にちぎれて消えた あのあざやかな幻よ
空にひらいたひとつの輪が
静かな河もにもうひとつの輪をむかへる
二重の円(まどか)えがいたあの夏のまたたきを
ぼくは今も 窓辺の風のなかに夢みてゐる


























(((*≧艸≦)ププッ
∩∩
(。・x・)
OuuO ⓣⓗⓐⓝⓚ ⓨⓞⓤ♪
そのときには何でもなかった風や匂いまで、
あとになって心の奥から急に戻ってくることがあります。
出来事そのものより、言えなかったことや、隣にいた人の気配のほうが長く残ることもあります。
誰にも知られず、記録にも残らない時間でも、本人の中ではずっと消えない。
そういうものが、その人の見方や生き方を、気づかないところで形づくっているのかもしれません。
空に咲いた花火と、河面に映った花火。その二つが重なって見えるところが、とても好きでした。
目の前にあったものは消えても、心に映ったものまでは消えないのですね。
少し寂しくて、それでもどこか温かい詩でした。