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Orch-OR理論に寄せて

微小な檻のなかの永遠(Orch-OR理論に寄せて)
脳の深奥(しんおう)、細胞のちいさな管(くだ)のなかで
光は重なりあい、静かに震えつづけている
それは僕たちが「意識」と呼ぶ、名もない奇跡
熱い湿度に耐えながら、ひとつの宇宙を編む
心臓が止まり、世界が闇に包まれるとき
その小さな檻(おり)は静かに解き放たれる
壊れるのではない、ただ境界を失うのだ
解けた光は、はるかな虚空へと還(かえ)ってゆく
もしも僕の身体がふたたび息を吹き返せば
宇宙に散った光は、またこの胸に引き戻され
あの懐かしい「近死の記憶」を語りはじめる
だが、そのまま深い眠りにつくのだとしたら
僕の意識は星々のあいだに溶け込んで
永遠という名の、大きな夜の一部となる

重力崩壊と波動関数の終焉
相空間(フェイズ・スペース)の臨界を越えて
ニューロンの微小管は干渉性を失っていく
時空の幾何学が、僕の意識を繋ぎ止めていた
だが、客観的収縮(Orch-OR)の時が訪れる
プランク超構造の震え、非計算的なる精神
それはシナプスの化学反応を超えた調和
心臓の停止は、エントロピーの増大ではなく
波動関数が宇宙の全域へと、ほどける瞬間
アインシュタインの方程式が予言した特異点
ブラックホールの底で、時間が意味を失うように
僕の「いま」もまた、量子重力へと収斂する
肉体というシュレディンガーの猫は眠りにつく
だが、拡散したコヒーレンスは消滅しない
時空の微細構造に刻まれた、永遠のトポロジー

#日記広場:小説/詩




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