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約束の高原にて



物理概念には、どれほど遠く離れても、たとえ生と死に引き裂かれても、一瞬で互いの状態が伝わり合う「量子もつれ(量子絡み合い)」詩編です


ぼくの古いルサックには いまもあおい風と
きみが残してくれた やさしい言葉のきれはし
生と死のふたつの国に ぼくたちは引き裂かれても
この高原のしずかな夜の底で たしかに繋がっている
窓辺では一羽の小鳥が 夜明けを惜しむように鳴いて
見えない宇宙の糸が ぼくの指先をそっとふるわせる
きみが遠い光のなかで ふと悲しみにうつむくとき
ぼくのこちらの部屋の灯も おなじように寂しく揺れる
旅人はいつも かすかな時間のすきまに迷いながら
逢えないきみの名前を なんども、なんども呼びつづける
けれどそこには もう涙も、距離さえも届かない——
ぼくが青い翳になれば きみは紅いひかりになって
ふたりでひとつの 愛のうたをいまも完成させてしまう
林をぬける風のなかで ぼくはきみのぬくもりを聴いている

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