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砂の砦、あるいは失われた歌へのソナチネ


I. 渚に咲くもの
風のとおるみちすじに ひそやかに
うす紅のともしびをともすものがある
白浜の かわいた砂のくぼみに
ハマヒルガオは かすかな記憶のようにひらかれていた
波のきれはしが たえずその足元を濡らし
洗いたてられた貝殻が 光をはね返している
おまえはそこに ひとつの影をおいて去った
まるで最初から 風のなかの幻であったかのように
耳をすませば あわい潮騒の階調(しらべ)のなかに
むかし聴いた ソナチネの終楽章がまじっている
けれどそれは もう誰の耳にもとどかない歌
去った季節の うしろ姿ばかりを追いかけて
わたしは今日も この渚をひとり歩いている
砂に埋もれてゆく あの日のはかない約束とともに

#日記広場:小説/詩




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