Nicotto Town ニコッとタウン

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五月の冷気


夜明け前の午前四時
世界はまだ、安いバーの飲み残しのように濁っている
トレンチコートの襟を立て
五月の、生ぬるい皮肉のような雨を聴く
アスファルトを叩く音は
タイプライターが冷酷な真実を刻む音に似ていた
「初夏」などという言葉は、この街にはない
ただ、少しだけ湿った孤独が
路地裏の錆びた非常階段を濡らしているだけだ
トタン屋根を跳ねる雨だれは
過去から送られてきた、終わりのない暗号
モールス信号のテンポで
忘れたはずの女の名前を刻み続ける
火をつけた煙草の煙が
紫色の冷気に溶けて消えた
生き延びることは、そう難しいことじゃない
冷え切った琥珀色の珈琲を飲み干すことと
この降り続く雨だれを
ただの雑音だと言い聞かせる、少しの嘘があればいい
夜が明ける
だが、光がすべてを救うわけじゃない
ただ、俺の影を
泥水の中に、より黒く浮かび上がらせるだけだ_

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