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憐れみの収穫


奴はゆっくりと、溜息を深くつく。
それが「思慮深さ」の合図だとでも言うように。
顎に手をやり、遠くを見つめ、重々しく言葉を紡ぎ出す。
「君の痛みは、僕の痛みでもあるんだ」
反吐が出る。
その言葉は、俺の傷を癒やすための薬じゃない。
俺の弱みを、自分の優越感という名の畑に撒くための種に過ぎない。
奴が欲しがっているのは、感謝の言葉と、
「自分はなんて慈悲深いんだ」という独りよがりの陶酔だ。
「……で、その親切の代償(ツケ)はいくらだ?」
俺の問いに、奴の仮面が一瞬だけ歪む。
だがすぐに、聖者の微笑みを取り繕う。
「代償なんて、そんな悲しいことを言わないでくれ」
その声の湿っぽさが、下卑た本性を何より雄弁に語っている。
思いやりを餌にして、他人の人生に土足で踏み込む。
相手を「救われるべき弱者」に仕立て上げ、
支配という名の鎖を、温かな毛布で包んで差し出す。
それが、あんたの「慈慮」の正体だ。
俺は奴の差し出した手を、冷たく一瞥する。
「あんたの考え深さは、底の浅い水溜りと同じだ。
少し覗けば、卑しい計算が丸見えなんだよ」
本当の慈しみは、無言で、影のように寄り添うものだ。
見返りを求め、わざとらしく演じるその姿は、
葬式で香典の額を勘定している守銭奴より浅ましい。
「芝居は終わりだ。その湿った憐れみは、自分のために取っておけ」
俺は席を立ち、奴の計算高い「善意」を置き去りにする。
振り返る必要はない。
舞台を失った役者に残されるのは、
誰にも届かない、ただの独り言だけなのだから。

#日記広場:ココロとカラダ




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