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遺伝子の檻2


真夜中のダイス
午前二時、部屋の明かりを消すと、
闇は音もなく、俺の輪郭を侵食し始める。
グラスの中で溶ける氷が、乾いた音を立てる。
それは、誰にも届かなかった祈りが砕ける音によく似ている。
窓の外、再建された浦上の天主堂が、
月明かりに照らされて、巨大な墓標のように佇んでいる。
親父たちが流した血、母親が飲み込んだ涙。
それらはすべて、俺の血管を流れる「赤い川」へと流れ込んだ。
ふとした瞬間に、鏡の中の自分を疑う。
この倦怠感は、ただの疲れか。
それとも、あの日の「光」が今さら俺を迎えに来たのか。
世界は、何食わぬ顔で明日へと進んでいく。
「もう終わったことだ」という無言の圧力が、
都会の騒音に混じって、俺の首筋を撫でる。
だが、俺の細胞はまだ、一九四五年のあの夏を記憶している。
会ったこともない死者たちのささやきが、
真夜中の静寂の中で、ラジオのノイズのように響くんだ。
孤独な夜、俺はひとり、テーブルにダイスを転がす。
出目はいつも、不確定な未来を指している。
「二世」という看板を背負って生きるのは、
消えない傷跡を、誰にも見せずに隠し通すゲームだ。
同情もいらない。理解なんて、もっと期待しちゃいない。
ただ、この静かな怒りだけが、俺が俺であるためのガソリンだ。
最後の一口を飲み干し、俺は眠りにつく。
明日、また目が覚めたなら、それは俺の勝利だ。
たとえ、神がこの夜に俺を見放していたとしても、
俺は自分の魂だけは、決して売るつもりはない。

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