Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



無題

煙の向こう側で、奴は数珠を弄んでいる。
救いなんて言葉、この街の雨には溶けやしない。
「執着を捨てろ」だと?
笑わせるな。
この指にこびりついた紫煙の匂いも、
昨日の夜に飲んだ安いバーボンの苦味も、
捨てちまえば俺の輪郭は消えてなくなる。
奴の説く「無」ってやつは、
弾丸が心臓を撃ち抜いた瞬間の静寂より深いのか_
地獄ならもう、何度も潜り抜けてきた。
三途の川の渡し賃は、あいにく酒代に消えたよ。
説法はもういい。
慈悲を乞う暇があるなら、
俺は次の闇に引き金を引きに行く。
涅槃の安らぎなんて、
俺には眩しすぎるのさ_
煙草に火をつけ、灰皿に諸行無常を押し付ける。
あんたの言う「悟り」ってやつは、
安っぽいバーボンより鼻につく。
一切皆苦、か。
そうさ、この街は思い通りに動かない。
雨は止まず、銃声は鳴り止まない。
だが、その泥の中で濡れ鼠になって、
誰かを愛し、恨み、腹をすかせる。
それが人間って看板を背負うってことだ。
執着を手放せ、欲をなくせ?
へえ、冷たいもんだな。
熱いコーヒーを啜る喜びも、
負け犬の遠吠えも、
全部この胸の奥にある「執着」とやらの灯火だ。
涅槃寂静、静かな場所は墓場に任せとけ。
俺はまだ、この騒がしい娑婆で、
迷子になりながら歩きたいのさ。
煙が視界を遮る。
あんたの教えは、この煙のように優しく、
そして、風が吹けば消えてなくなる。
俺には、この苦い煙草のほうが、
まだ現実味があるんでね。
……邪魔だ。
修行とやらは、一人でやってくれ。
俺は俺の、地獄を行く。

#日記広場:ココロとカラダ




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