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恥多き風

あ、風。春の風でございます。
なんて意地悪で、お節介な風なのでしょう。
窓を開けた途端、私の部屋に溜まった、あの古臭い憂鬱を、ひょいと攫っていこうとするのです。
「もう春ですよ。外へ出なさい」
そう囁く風の指先は、不躾なほどに温かく、私の怠惰な頬を撫でまわします。
庭の桜の蕾を、あんなにせっかちに揺り起こして。
私にはわかっているのです。あの風は、新しい絶望の種をどこからか運んできて、私の足元にそっと植え付けていくつもりに違いありません。
ああ、春の光を孕んだ風というのは、どうしてこうも残酷に、人の孤独を透かし彫りにしてしまうのでしょう。
いっそこのまま、あの風に浚われて、空の果ての青い絵具の中に溶けてしまえたら、どんなに楽でしょうに。
けれども私は、この小憎らしい風に背中を押され、
やっぱりまた、不器用な笑顔を作って、明日という嘘を生きなければならないのでございます。

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