断ち切る指先
- カテゴリ:日記
- 2026/04/09 11:59:25
「行かないで」
掠れた声が、土砂降りの舗音に混じった。
掠れた声が、土砂降りの舗音に混じった。
彼女の指が、雨に濡れた俺のコートに縋りつく。
その白く細い枝のような指先が、
かつて愛した温もりを思い出させようと、必死に抵抗していた。
その白く細い枝のような指先が、
かつて愛した温もりを思い出させようと、必死に抵抗していた。
「……もう、俺の居場所はここにはない」
振り返れば、崩れ落ちてしまいそうになる。
だから俺は、海の方だけを見つめた。
だから俺は、海の方だけを見つめた。
彼女の震える肩が、掌(てのひら)に伝わる。
だが、その震えを止めてやる権利は、もう今の俺にはない。
だが、その震えを止めてやる権利は、もう今の俺にはない。
「……離せ。船が待っている」
冷たく言い放ち、俺はその指を一本ずつ、丁寧に剥がした。
爪がコートの生地を軋ませ、やがて、ぷつりと繋がりが切れる。
爪がコートの生地を軋ませ、やがて、ぷつりと繋がりが切れる。
背後で、彼女が崩れ落ちる気配がした。
嗚咽さえ、雨の轟音にかき消されていく。
嗚咽さえ、雨の轟音にかき消されていく。
俺は一度も振り返らず、桟橋を歩いた。
頰を伝うのが、雨なのか何なのかを確認するほど、俺はもう若くない。
頰を伝うのが、雨なのか何なのかを確認するほど、俺はもう若くない。
ただ、冷え切った指先だけが、
彼女の体温を、呪いのように覚えている。
彼女の体温を、呪いのように覚えている。
























