Nicotto Town ニコッとタウン

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掃除の依頼

深夜、ドアの隙間から滑り込んできたのは、一通の白い封筒だった。
切手も宛名もない。ただ、微かに古い紙の匂いがする。
中身は、たった一枚の「領収書」の写しだ。
ある慈善団体の名で切られた、一見すれば何の変哲もない寄付の記録。
だが、その裏側には、震える手で書かれた小さな数字の羅列が並んでいる。
「……また、数字の掃除か」
俺は万年筆を抜き、インクの残量を確かめた。
依頼主は、この寄付金がどこへ消えたのかを知っている。
善意という名のフィルターを通り、裏社会の洗浄機にかけられ、最後は誰かの「清廉潔白な政治資金」に化ける。
その美しい循環の中に、一滴の毒を混ぜて止めるのが、今回の俺の仕事だ。
武器はいらない。
必要なのは、奴らが最も信頼している「帳簿」の、たった一箇所の矛盾。
それを見つけ出し、彼らの完璧なシステムを内部から食い破らせる。
「……明日の朝には、きれいな空気になる」
俺は封筒を灰皿の中で燃やした。
揺れる炎が、寄付者の名前と、それを食い物にする奴らの影を飲み込んでいく。
感謝も報酬の自慢もいらない。
ただ、朝が来たときに、この街の汚れが少しだけ減っていればそれでいい。

#日記広場:仕事




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