Nicotto Town ニコッとタウン

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震える指、透明な遺言

列車の隅、あいつのコートのポケットから
滑り落ちたのは、汚れた一通の封筒だった
表書きには、俺の名が――不器用な、あいつらしい筆跡で。
「これを読んでいるなら、あなたはきっと独りね」
最初の一行で、視界が歪んだ。
音を立てて崩れ落ちる。
『自分を責めないで。あなたが背負った闇も、
ジタンの煙の匂いも、私はすべて愛していたわ。
不器用な優しさを、弾丸の代わりに放つあなたを。』
窓の外、夜明けの光が手紙の文字を透かす。
インクが滲んでいるのは、あいつが書いた時の涙か、
それとも、今俺の目から溢れたものか。
『お願い、最後は笑って。
私の分まで、陽の当たる道を歩いて。
さよならは言わないわ。また、どこかの終着駅で。』
俺は手紙を胸に抱き、声を上げて泣いた。
冷たい鉄の塊のような俺の心に、
あいつの体温が、最後の灯火(ともしび)を灯していく。
列車が止まる。ドアが開く。
俺は涙を拭い、あいつが願った「陽の当たる場所」へ、
震える足で、一歩を踏み出した_

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