Nicotto Town ニコッとタウン

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四月の盲目(ブラインド・エイプリル)

カレンダーが残酷な冗談をめくっても
街はただ、白い沈黙に飲み込まれている。
春の霧は、記憶の解像度を下げるための装置だ。
昨日までそこにあったはずのビルの輪郭が
ミルクに溶けた角砂糖のように消えていく。
「見えるものが真実だ」と抜かした哲学者は
この湿った朝の街で、きっと迷子になるだろう。
俺はコートの襟を立て、見えない足元を信じる。
桜の花びらが、濡れたアスファルトに張り付いている。
それは、誰かが途中で投げ出した
美しすぎる言い訳の残骸だ。
霧の向こうで、誰かがライターを擦った。
オレンジ色の火花が、一瞬だけ世界を繋ぎ止める。
正解なんて、最初からこの煙の中にしかない。
俺たちは、出口を探しているんじゃない。
ただ、この白い迷路を正しく歩き通したいだけだ。
春が残酷なのは、花が咲くからじゃない。
すべてを曖昧にする、この優しすぎる霧のせいだ。

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