Nicotto Town ニコッとタウン

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不達の追伸

夜間飛行の客室に、かすかな紙の匂いが混じります。
お客様、膝の上で握りしめていらっしゃるのは
もはや届くことのない、色褪せた一通の手紙でしょうか。
消印は数年前、あるいは、もっと遠い記憶の底。
宛名の主(あるじ)はもう、この世界のどこにもおらず、
あるいは、お客様の隣に座る資格を失ってしまった。
行き場を失った言葉たちは、インクの染みとなって
その薄い封筒の中で、静かに窒息しています。
「伝えたかった」という未練は、
この高度一万メートルでは、何よりも重い荷物となります。
鋼鉄の翼が空を裂いても
過去という厚い雲を、振り払うことは叶いません。
配達されるはずだったその想いは、
今夜、この暗闇の中で、静かに灰へと還しましょう。
夜間飛行のお客様。
言葉にできなかった真実が、あなたの胸を締め付けるなら
このエンジン音に紛れて、どうか吐き出してください。
朝日は、容赦なくすべてを照らし出します。
その手紙を、再び鞄の奥へ隠すのか
あるいは、夜の淵にそっと置いていくのか。
シートベルトをお締めになったまま、
新しい朝という、誰も知らない街へ降り立ちましょう。
その封筒の重みが、いつか光に変わるまで_

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