Nicotto Town ニコッとタウン

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白の葬列


重い雲が 街の輪郭を塗り潰していく
吐き出す煙草の煙よりも は冷たく、白い
男はコートの襟を立て 凍てつく風を肺に溜めた
言葉はもう 意味を成さない
約束も 裏切りも この雪がすべて等しく覆い隠すから
アスファルトに刻まれた 消えないはずの血痕さえも
今はただ 無垢な白の底へと沈んでいく
古びた街灯が 断続的に瞬きを繰り返す
その鈍い光に照らされて 舞い落ちる雪は
まるで 行き場を失った 死者の魂のようだった
男の後ろ姿に 容赦なく雪が降り積もる
肩に積もる白さは 彼が背負ってきた年月の重さ
オレンジ色の光に縁取られた影だけが
孤独な戦士の 唯一の相棒だった
振り返れば そこにあるのは自分ではない誰かの夢
だから男は 光の届かない路地裏へと 足を早める
背中の雪を 一度も払うことのないまま
夜が明ける頃 街は昨日を忘れているだろう
降り続いた雪が すべての境界線を消し去り
男が歩いた道筋さえも 銀世界の底へと埋葬する
最後に残ったのは 雪の上に落ちた 火の消えた吸い殻ひとつ
それは彼がここにいた 唯一の証明であり
誰も読むことのない 短いエピタフ
風が吹き抜け その吸い殻さえも白に飲まれていく
男の背中はもう どこにも見えない
ただ 古びた街灯だけが 誰の訪れもない朝を
静かに、静かに見つめていた

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