星
- 2024/03/30 10:54:03
夜空には数多もの星が炸裂し、光のシャワーとなって漆黒の闇の中で輝き乱舞していた。
一瞬の瞬きの間だけ、その光に照らされて荒野に生えるぐにゃぐにゃとした枯れ木たちの姿が見えた。
そのとき、ひしゃげた枯れ木と枯れ木の間に一瞬見えたのは、うずくまる巨大な獣の黒い影だった。
巨大な獣は深い傷を負って、うずくまっている。
ひときわ強力な光が凄まじい爆発音と共に夜空に炸裂した時、ばりばりと地面が裂ける。
この世に最後に残された巨大な獣は恐怖の声をあげて、ネズミたちは地表を逃げまわっていた。
また強い光が夜空で炸裂したとき、今度は獣の足元にある地面も裂けて、獣は裂けた地面に落ちていった。
夜空では光が連続して絶え間無く炸裂し、地面はめちゃくちゃに裂け続け、ネズミたちも次々に裂け目の中へ落ちていった。
遠くの山は噴火して土石流と溶岩が裂けた地面の暗闇へ流れ込み、まだわずかに地表に残っていたネズミたちは土石流に飲み込まれるか灼熱の溶岩に焼かれて、残らず死んでいった。
それから長い間、夜空の炸裂と噴火は収まらず、地面も裂け続け、星の形をすっかり変えてしまった。
やがて、噴火の煙を含んだ黒く冷たい雨が降り、地面を何日も冷やし続けた。
雨水は地面の裂け目に入り込み、星の深部にまで至った。
急速に冷やされた星はまたさらに大きくひび割れて、やがて粉々になって破裂した。
それから、宇宙の方々へ散り、漂った小さな星のかけらたちは、長い年月をかけてひとつひとつの小さな星になった。
そのうちの一つのひときわ小さな星は、運良く水と空気に満たされた透明で美しい星になった。
やがて星に命が生まれた。
命はたくさんの愛を持って、その愛は命を創造した。
そして生まれた数多の命は様々な色を持ち、全てが形の違う生き物になった。
はじめ、1000ほどの生き物がいた。
例えば、244の短い足を持つ緑色の丸っこいものや、ピンク色のごく小さな粒のような生き物などがいた。
中でもひときわ大きいのが黒いけむくじゃらの生き物で、とてつもなく長い足が8本で大きな胴体の上に小さな頭がちょこんとのってるものだった。
全長、242メートルもあった。
きゃらなし、と名乗っていたそいつはこの星の王になった。
きゃらなしは傍若無人に振る舞い、たくさんの生き物を食い尽くした。
きゃらなしに敵うものは誰もおらず、星の上の生き物は数日で絶滅した。
後に残ったのはきゃらなし一匹だけだった。
たった一匹でこの星に取り残されたきゃらなしは何も食べることも出来ずに次第に飢えていった。
24日後、ついにきゃらなしは倒れ、絶命した。
この星にはこれで生き物はいなくなったかと思われたがしかし、土の中には何兆という微生物が蠢いていた。
微生物たちはせっせときゃらなしを分解して土の養分にした。
土から花が咲いて種を飛ばした。
種は少しづつ広がって、1年後には星の大地を緑で覆った。
今から、46億年前の話だ。
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- Arya-Sa
- 2024/06/29 20:08
- ちょっとした創世紀。
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- まさみ
- 2024/04/03 13:56
- 叙事詩みたいな文章ですねー、面白いと思いました
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