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月世界

投稿者:ロワゾー

ハリ・ハリ・アウァツァラティ(いたいのいたいのとんでいけ)

こうとなえると、地上でだれかの苦痛が生起されたとき、まろやかな真珠層の、ひかりの被膜がそれをくるんで、一りゅうの輝きがうみなされる。そしてしたたり、上天へ、月へとおちていく。

月上には水の記憶の海があり、その底には寺院がある。

雨滴のごとくふる真珠は、多くは到達することもなく、とけて漂いちってしまうのだが、ときに底に至り、月の寺院の尼僧に拾いとられる。
聖像らの額飾り、耳飾り、へそ飾り、あるいはその目や古拙的に笑むくちもと、膚のひかりや薄衣のつやに彫琢され、塗布される。やがて白螺鈿のきらめきとなって剥離し、月の海へ漂いうせていく。

尼僧らはおだやかにたえまなく美しい行をする。

まれに、はりさけて蓮形に花ひらくものがある。
そうしたものは碧白い香油にひたして祭壇に祀り、祈りをささげる。

百年もすると、かたちも香気もきえうせ、からっぽにすきとおった玻璃だけが残る。



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月といえば、むかしこんなの書きました。

アバター
2024/06/29 21:05
いい詩だ。
アバター
2024/03/07 11:25
「尼僧らはおだやかにたえまなく美しい行をする。」という文章が好きです(^-^)
そのまま、何かの(もしくはこの本がもし長編になるなら)小説のタイトルになりそう。
アバター
2024/03/05 22:52
玻璃の冷たさと、月の乳白色のあたたかさがなめらかに味わえました。
アバター
2024/03/02 17:12
痛みすら祝福になる時がある。そして、全てが一瞬の煌めきのようなものなのかもしれないです。
美しいですね。



管理人
ケニー
副管理人
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公開
全公開
カフェの利用
朝10時~夜24時
カテゴリ
自作小説
メンバー数
12人/最大100人
設立日
2024年02月18日

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