月への旅
- 2024/02/25 20:30:41
投稿者:せんちゃん
「一人旅がしたいのですね」
「…そうかもしれない」
「では、月旅行などいかがです?」
「…ロケットに乗って?馬鹿らしい」
「はは。そんなものに乗らずとも月への道は太古の昔から存在するのですよ。ご存じでしょう? 古代の中国の文献には詳しい地図すら記されてあります」
「ここは日本だけどね」
「あなたはすでに、その道を歩き始めているではありませんか。あなたの体はもう枯れ枝のようだ。その魂は人が見えぬモノを見ている。そして、わたしの声が聞こえているのもあなただけです」
「月世界はよいところですよ。青い星を眺めながらお仲間と美酒に溺れることも、幾億もの書物の世界に耽溺することも、夢のような美女と快楽に溺れるのも自由です」
「おや、どうしてあなたは泣いているのです?」
「…僕が求めているのは…だけだ」
「ええ、そうでしょうとも。」
「さあ、会いに行っておあげなさい…」
また、あの夢を見た。
そして泣いて目を覚ました。
枕元に一輪ざしの薔薇がある。
枯れかけたその花びらに僕は目をこらす。いつまでも。
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- Arya-Sa
- 2024/06/29 21:38
- なるほど。いい短文 ー 詩 ですね。
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- べる
- 2024/02/25 23:39
- 切ないけど素敵なお話です。「…僕が求めているのは…だけだ」の「・・・」は大事な方だったのでしょうね・・・
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