左回りのリトル(6)
- カテゴリ: 自作小説
- 2026/06/09 00:33:34
「どういう事なんでしょうね」 僕はキャンバス用の大きなナイロンバックを担いで歩きながら横目で空を見た。少し離れて歩く彼女はもうずっと額に手を当てたままだ。外灯の点る銀座は古い歌のような郷愁を失いつつある。東京、という名前で括られてしまうのは、夜が明るくなって街が人に繋がれ続けたからじゃないかとふと思...
「どういう事なんでしょうね」 僕はキャンバス用の大きなナイロンバックを担いで歩きながら横目で空を見た。少し離れて歩く彼女はもうずっと額に手を当てたままだ。外灯の点る銀座は古い歌のような郷愁を失いつつある。東京、という名前で括られてしまうのは、夜が明るくなって街が人に繋がれ続けたからじゃないかとふと思...
地下鉄のホームのアナウンスが終わって、僕はそこまでの道々に考えた事を言おうと決めた。「空木さん、明日休みだよね」「うん」「暇?」「うん」「『水からの飛翔』の実物が見たいんだ。明日までだから」「……」「正確に言うと、銀座に行きたい」「見たの?」「うん。空木秀二の絵がいちば...
二つめの駅で、空は「お疲れさまでした」と言った。僕も「お疲れ。また明日」と返し、閉まる扉の向こうの彼女が階段に消えるのを確認してから、鞄を開けた。 見なくていい、と言ったきり無言のままだった。僕は展覧会のパンフを開いた。 1ページ目。標本箱に並ぶデスマスク。 2ページ目。鳥の巣に眠る子供。 3ペー...
昨夜、寝る前の薬が出してなかったので、旦那に
金庫(薬入れ)から出してもらい
1錠増えた眠剤(いろいろ計8錠)を飲んで床についたのだが全く眠くならない…
旦那を起こすのは忍びないので、スマホを掴むとそっと部屋を抜け出し1階に降りてリビングで過ごすことにした。
眠くないから暇を持て余し...
駅の中を通らずに線路下の地下道を抜けた。駅ビル脇の従業員口で「6F、双月堂、野宮」と書き、バッヂを貰う。従業員用のエレベーターは灰色で薄暗い。乗り合わせた女の子はコートの下にもう春の鮮やかな色の服を着たちぐはぐさで、少し寒そうに両手で自分を抱いている。僕は一人六階で降りた。「おはようございます」「...