一人暮らしの味気ない食卓に、風情のある茶碗飯の一つも欲しい。コンビニ弁当や出来合いの総菜ものばかりで、忙しさに負けてそんなものばかりが並ぶ。一人暮らしでもどうせなら蓋つきの碗がいい、昔は祖母が並べる夕飯には蓋がついていた。家族でも仕事のせいで一緒に食べられないので、冷めないようにである。でも実際は冷...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
一人暮らしの味気ない食卓に、風情のある茶碗飯の一つも欲しい。コンビニ弁当や出来合いの総菜ものばかりで、忙しさに負けてそんなものばかりが並ぶ。一人暮らしでもどうせなら蓋つきの碗がいい、昔は祖母が並べる夕飯には蓋がついていた。家族でも仕事のせいで一緒に食べられないので、冷めないようにである。でも実際は冷...
京都の石畳に雨が降る、霧雨が降る。番柄通りと名付けた裏通りを見下ろせる。二階の格子窓からも風にのって、雨は降りこむ。昔見た絵本の中に出ていた名前。子供たちの足音が響く、石畳のへりは踏んじゃいけない、踏んだら負けょ、あっぷっぷっー。
今日着て行くシャツを選ぶ、テーブルを占拠して眺める。ボタンが外れているものを発見、修繕することにする。しかし、このシャツのボタンが見つからない。たまたまブルーのボタンがあったので付けてみました、このほうがチャーミングなのでいいかも知れない。ふぅむ、たしかにボタンの色って全部一緒じゃなくてもいいかも。...
あどけない表情、不思議そうに私の罪を覗き込む。私たちはクルクルと回り続けて、ほんの数分の間に何年も過ぎたようだ。ベビーフェイスが笑う、私はくるおしく押し黙る。あなたは気づいただろうか、知らないふりをしているのだろうか。小さな罪を許したのだろうか、あきらめたのだろうか。抱き寄せたい、腕の中に。
行ったことのない、砂漠が好きだった。誰にも何にも知らせないで、通り過ぎるのを待つから。じっとこうしていれば、いつかきっと大丈夫になるから。