Nicotto Town



自作小説倶楽部5月投稿

『理想の家』

 すっかり疎遠だった伯父から家を相続するなんて晴天の霹靂でしたよ。でも私は仕事を定年退職して暇をもて余していて、さらに住んでいたアパートが老朽化のために取り壊されることになった時だったから渡りに船で引っ越すことにしました。下見してみて庭があるのと階段の踊り場から一階を一望出来るの...

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自作小説倶楽部3月投稿

『赤い蝶』

伯父に初めて会ったのは私が二十歳になった一月後でした。私の懇願に対しての返答が「この屋敷で働かせてやろう」でしたから印象は最悪でした。しかし両親が借金を残して他界した天蓋孤独の身では伯父を頼らざるおえませんでした。母が駆け落ちして実家を勘当されたことも弱味でした。母を勘当したのは私の祖...

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自作小説倶楽部2月投稿

『冷たくて美しい、』 

 私は白い地の中を這うように動く黒い背中を見つめていた。空気が肌を切りそうなほど冷たい。日に日に春の足音が近づいて来ていますと今朝の天気予報で言っていたが除雪した雪が集められた校庭の端で氷雪はまだ固く、溶けることは無い。
 ふいに小さな背中が傾ぐ。足を滑らせたのだ。少年は無...

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自作小説倶楽部1月投稿

『チェスゲーム』
1・ポーン
その人に会ったのはまったくの偶然です。外見? 丸い眼鏡と口の周りに白い髭。なんとなく死んだおじいちゃんに似ているなと思いました。
その日、私は失恋の痛手で弱っていて、それでも生活のためにアルバイトに行かなきゃならなくて、本当に何もかもどん底でした。そのせいですね。優しか...

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自作小説倶楽部12月投稿

『彼女の微笑みと鴉』

年の暮れ、駅前には行き交う人々が途切れることは無く、寒波にもかかわらず活気で気温が上昇しているようにすら感じられた。地上を歩く人々はそれぞれの道を急ぎ、ひとつのビルの屋上につながる扉が開いたことに気付く者はいなかった。
「寒ぃな」
先頭の男が扉を開けると背後にいた男は彼を押し...

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