自作小説倶楽部12月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2019/12/31 23:23:15
『小さな女王』
両親が死んで俺がお屋敷に取り残されたのは12歳になった年だった。父は旦那様の秘書だったこともあり、身寄りのない俺は、そのままお屋敷の使用人たちに育てられることになった。俺に最初に与えられた仕事は一つ年齢が下のお嬢様の話し相手と言われたが、実際はカナリアの代役だった。
ちょうど...
『小さな女王』
両親が死んで俺がお屋敷に取り残されたのは12歳になった年だった。父は旦那様の秘書だったこともあり、身寄りのない俺は、そのままお屋敷の使用人たちに育てられることになった。俺に最初に与えられた仕事は一つ年齢が下のお嬢様の話し相手と言われたが、実際はカナリアの代役だった。
ちょうど...
『図書の守護者』
書架の間を数珠や御札を手に行き来していた下級生たちを追い出し、カウンターの内側の定位置に戻ったが読書を再開するには心がささくれてしまい、諦めて本を閉じた。
「また、幽霊探しの子たち?」
学校司書の高杉さんがにこにこと笑いながら言った。その手は古い蔵書目録をめくっている。わたしは...
『彼女が美しかった頃』
高校の時の古典の教師は山ババアと女生徒たちに呼ばれていた。苗字は山本か山田で、下の名前も「子」が付く地味なものだったと思う。覚える気もなかったから忘れてしまった。当時の年齢は30代だと聞いたが、10代の私たちにとっては遠い未来の年齢だった。外見もチビで小太り、肩の少し上で切...
カブトムシの森 コツン、と音がして千佳子は目を覚ました。玄関のドアを見るが、しん、と静まり返って動く気配は無い。少しして、それがベランダのガラス戸に何かが当たった音だと気か付いた。鍵を外して戸を引くと、夜風が千佳子の頬をなで、遠くで車のクラクション音が響いた。
ベランダには黒いゴミ袋がでこぼこ...
思い余って①を書いた時、習慣的に内容を③まで考えていたので書いておきます。
6月の人事発表直後から、ひとつの言葉がささやかれた。
『人事がおかしい』
どこの部署でも人手不足に悩まされている。正社員の採用が無いから、
それなのに新商品の受付のためのデータ入力が足りないからと人事が生み出した技
『...
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