曇っている、さっきまで晴れてたのに。
不思議と草一といると天気が安定しない、
だから雨男なんて呼ぶ奴もいた。
花びらが足元から舞い上がり、
風にはこばれてどこかへ消えてしまった。
散る花はあらたな風を誘い、雲を呼んで、
しだいに日がかげってしまう。
誰もいない座敷で私は花葛をみていた、
草一の祖母が...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
曇っている、さっきまで晴れてたのに。
不思議と草一といると天気が安定しない、
だから雨男なんて呼ぶ奴もいた。
花びらが足元から舞い上がり、
風にはこばれてどこかへ消えてしまった。
散る花はあらたな風を誘い、雲を呼んで、
しだいに日がかげってしまう。
誰もいない座敷で私は花葛をみていた、
草一の祖母が...
風に吹かれながら、
飛んですぐに壊れて消えていく。
ぎゅっと握りしめたこの手も、
いつかは離れあっという間に遥か彼方。
だけど後悔はしない、
いつだって思いをこめてふくらます。
風はあとからあとから吹いてくるから。
小雨が降る午后、
悪友がアンテナ付の古いラジオを持ってやってきた。
中庭でそのラジオを聴いていると、
隣の家のネロがやってきた。
ネロは灰色のネコだ、
いくぶん気まぐれで呼んでもこちらにはよってはこない。
勝気そうな緑色の目が印象的で、
光沢のある毛並で若い猫だというのはわかる。
悪友がそのネコの気...
昼の眩しさに瞼を伏せ、
もう一度ゆっくりひらく。
涸れた噴水がひとつある、
落ち葉のたまった水盤に鳥の羽があるのを見つけた。
白い縞もようのある淡藍色の羽だ。
私はそれを本の栞にして、
読みかけの頁に挟んだ。