暇してるからおいでょ、と友人からの誘い。私が暇なのをよくご存じのようで、玄関で迎えてくれたのは太り気味の猫。家の中に入ろうとすると、少し不機嫌そうに笑う。友人の飼い猫はいつもこうして出迎えてくれる、私は慣れっこなので相手にもしないで奥へ。畳の上にゴブラン織りの絨毯と西洋テーブル、いつもながらミスマッ...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
暇してるからおいでょ、と友人からの誘い。私が暇なのをよくご存じのようで、玄関で迎えてくれたのは太り気味の猫。家の中に入ろうとすると、少し不機嫌そうに笑う。友人の飼い猫はいつもこうして出迎えてくれる、私は慣れっこなので相手にもしないで奥へ。畳の上にゴブラン織りの絨毯と西洋テーブル、いつもながらミスマッ...
さらさら流れて草笛は、小さな恋を奏でます。この気弱な私にも恋の花咲くとき、かえりみられない片思い。ひとりぼっちの足元に、咲いてはゆれるすみれ草。青く青くつきぬけて、この夜の空を切りつける。
森の中で浮かぶ人、森をとおって浮かぶ人。あっちこっちに浮かんでいる、たくさんのものたち。こっちへ来て、あっちへ行って。さよならを繰り返す。もう次はないのかと思っても、いつでも次はやってくる。 花の中で浮かぶ人、花をとおって浮かぶ人。失ってきたものを取り返そうと、心をこめて歌っても、雨は次々と降ってく...
港の見える公園で、ふりむいた時に出会った人は、偶然にも隣のベンチに座ってた人だった。それっきりだったけど、小さな岬の観光客に紛れてしまったのだと思う。やがて霧が出てきて、美しい風景も隠れてしまった。坂道を一歩一歩おりるごとに、思い出は深く沈んでいった。あるべきはずの霧の中の星で人々は変わらずに、私た...