ぼんやりと読書、目が疲れて仰向けになる。目に入ってきたのは、書棚の奥の小さな小瓶に入った赤い石。手に取るとその小瓶には、ルビィグラスと書いてある。どこぞのお土産に買った物だが、どこで買ったかまでは思い出せない。小瓶のラベルには、薔薇の蔓が書かれて渦巻いている。旅の思い出にと、必ずひとつだけは自分用に...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
ぼんやりと読書、目が疲れて仰向けになる。目に入ってきたのは、書棚の奥の小さな小瓶に入った赤い石。手に取るとその小瓶には、ルビィグラスと書いてある。どこぞのお土産に買った物だが、どこで買ったかまでは思い出せない。小瓶のラベルには、薔薇の蔓が書かれて渦巻いている。旅の思い出にと、必ずひとつだけは自分用に...
空よりも、もっとうすい白い雲が。ほそながく浮かんでいる。数分後には、その雲は位置を変える。雲は、風向きに流されてる。今日の風は冷たい、強い風でときどき街の雑踏が消える。この街の空の色は、うすい。ぬけるような青空の日は、数えるくらいしかない。だけど、このうすさに救われるときがある。この空の色に安心する...
小抽斗の中の襟巻と首飾り、どちらの品も母の形見である。誰しも形見みたいなものは、ひとつくらいは存在するだろう。どちらの品もよく覚えている、母のお気に入りで出かける時にはよく着けていたから。あまり装飾品の類は持たなかった母、唯一の品と言ってもいいくらいだ。小抽斗にはひとつだけ蝙蝠をかたどった取っ手がつ...