架空線が灰色の雪を横切って、北の街にのびてゆく。
無限軌道に浮かぶ駐車場は、雪の階段ができている。
菱形につらなるパンタグラフから碧い火花がちり、
遠ざかる市街電車の音はいつまでも凍った敷石をふるわせた。
「ねぇ、雪玉をスパークさせる方法を教えようか」
「知ってるさ、炭酸水とドライセルを使うんだろう...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
架空線が灰色の雪を横切って、北の街にのびてゆく。
無限軌道に浮かぶ駐車場は、雪の階段ができている。
菱形につらなるパンタグラフから碧い火花がちり、
遠ざかる市街電車の音はいつまでも凍った敷石をふるわせた。
「ねぇ、雪玉をスパークさせる方法を教えようか」
「知ってるさ、炭酸水とドライセルを使うんだろう...
なんども涙が浮かぶ気がした
流れださないなら大丈夫
そんな非常口をもうけて
押さえきれない切なさを
ひっそりと想いだす
香ばしい香りが食欲をそそる。
マスターは今日のサービスと言いながら、
フランスパンとレモンジャム出してくれた。
紅茶はカモミールティが相性がいいと言う。
パンを見て昼間車の中から見た、
フランスパンのような雲を思い出した。
ぼってっと空に浮かんで、重そうに少しずつ西へ流ていた。
フランスパンはこね方...
「ほら、ちゃんとこの通りあるじゃないか・・・どう思う」
「ここに刺繍してあるの・・誰かの名前だょ」
ほつれた縫い糸の下に、かすかに文字が見える。
「・・・・・バンキッシュ博士」
「誰」
「さあ、マッキントッシュなら知ってるけど」
「それはお菓子のメーカーだろ」
私達は相談して、図鑑を持ち出すことにし...
翌日の昼休み、私は理科室を訪ねてみた。
昨日の本がどれくらい古い物なのか、
教師に聞いてみようと思ったのだ。
まだ若い理科の教師は、
実験器具を並べたままの教卓で食事の最中だ。
戸棚の中を絶対に見せてはくれない点では頑固だが、
生徒にはいたって評判がいい。
気さくであるし、固形燃料で飛ばすロケット作...