私はまたこの店に来てしまった、
何とも風変りなこの店に。
「いらっしゃいませ、お気に召すままどうぞごゆっくり」
店主も変わっている、白髪なのに肌はツルツルしている。
私はたずねた、
「よく耳にするのですけど見たことのないものなんです」
「ほほ・・・それはどのようなものでしょう」
それは腹時計である。...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
私はまたこの店に来てしまった、
何とも風変りなこの店に。
「いらっしゃいませ、お気に召すままどうぞごゆっくり」
店主も変わっている、白髪なのに肌はツルツルしている。
私はたずねた、
「よく耳にするのですけど見たことのないものなんです」
「ほほ・・・それはどのようなものでしょう」
それは腹時計である。...
朝晩の風が心地よく感じられるようになると、
虫の声が聞こえはじめる。
夜の道を歩くと、
街路樹の根元や生け垣の辺りから涼やかな声がする。
もうすぐ秋、
空気は澄んできている。
そのかろやかな空気の中、
虫の声と一緒に歩く。
鳴き声の美しい鈴虫は一年に一度、
秋にしか鳴かない。
生きている時間のうち二...
どんなに気をつけていても机や椅子には、
いつのまにか小さな傷がついている。
人も関われば関わるほど、
お互いのどこかに必ず傷をつけている。
それが嫌なら、
無人島ででも暮らすしかない。
それもまた、
自分で自分を傷つけてしまうだろうし。
傷を怖がるよりも、
どうやって治すかを考えた方がずっと早い。
...
畳に座ると炭のかおりに気づいた。
澄んだ空気の中、
赤く焼ける炭の音がする。
障子を通して入ってくるひかりは、
そこにあるものを優しく映し出す。
季節の花。
その時期にあった掛け軸。
せみの声がコオロギの声に変わる、
秋は近いと鳴いている。
ホントにたまに茶道に誘われる。
なにがいいって、
もちろん...