「契約の龍」(156)
- カテゴリ: 自作小説
- 2010/03/05 22:03:58
クラウディアが戻ってきたのは、ちょっと、どころではない時間がたってからだった。悪びれもなく食事などを持参して戻ってきたので、抗議する気も失せた。
「…それで、調査に大きな進展があったんですか?」
誘拐だか拉致だかされて、現在はミードにいる、と思われる――マーカーが付けてあるので判...
ぶろぐ、の、ようなもの。
クラウディアが戻ってきたのは、ちょっと、どころではない時間がたってからだった。悪びれもなく食事などを持参して戻ってきたので、抗議する気も失せた。
「…それで、調査に大きな進展があったんですか?」
誘拐だか拉致だかされて、現在はミードにいる、と思われる――マーカーが付けてあるので判...
クラウディアが手を盥に入れると、湯が手のひらほどの大きさの球体になる。それをクリスの頭の近くまで運ぶ。湯がクリスの額に触れると、吸い込まれるように頭を覆う。
「しばらく支えててね」
「しばらく、って…どのくらいですか?ずっとこの姿勢でいるのはちょっと、辛いんですけど」
「辛かっ...
「お疲れさま。課題の提出だけにしては、ずいぶん時間がかかったね?」
薄暗い部屋のドアを開けたところで掛けられた声に、一瞬足が止まった。声や口調が、クリスのそれに酷似していたからだ。だが、薄暗い廊下を歩いてきた目には、クリスが依然、ベッドの上に横たわっているのが見える。むろん、声をかけてきたのは、...
「それよりも、先程の申し出は…」
「…申し出?」
「私の提示した情報は要求したものに適うでしょうか?」
「ふむ……結果次第じゃな」
「…そんな」
「考えてもみよ。そなたが差し出すものは、情報であろう?差し出したとてそなたは痛痒も感...
「…そういえば、そなたも何やら要望がある、とか言うておったな。何だったかの?」
そういえば、って……「背の君」の事しか頭にないのか?
「私と、私に連なるであろう者たちから、手を引いていただきたい、と」
「…そういう意味であったかの?手を離す、...