Nicotto Town



自作小説倶楽部3月投稿

『手のひらの上』
「今、貴女は人生の岐路に立っています」占い師は少し軽い口調で言った。深刻に悩んでいる客になら、もう少し重々しい調子で話すだろう。しかし目の前にいる女は好奇心に目を輝かせて耳を傾けている。シナリオ通りで、楽しい展開をお望みだ。ならばプロとしてそう振る舞うのみだ。女は薄明りの中でも十分...

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自作小説倶楽部2月投稿

「雪山のロマンス」
男はわたしに断りもなく煙草を取り出して火を点けた。思わず顔をしかめそうになるが努めて無表情を維持する。「私の妹のA子がB男と知りあったのは、」私の都合などかまわず男は話し始める。知っているわ。と反発したかったが、うなだれるふりをして顔をそらす。癖のある煙草の臭いが鼻をかすめた。わ...

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自作小説倶楽部12月投稿

『ある手紙』
拝啓A.N様 このような手紙を突然差し上げる失礼をお許し下さい。私のことを覚えていてくださいますか?貴男と初めて出会ったのは暖かな春の日でしたね。あのころは私も無垢で無知な少女でした。田舎から出て来たばかりで子供っぽいおさげ髪が恥ずかしく思ったものです。それでも二人で何度も花咲く美しい...

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自作小説倶楽部11月投稿

『温かな午後』
「畜生」思わず罵りが唇からこぼれ落ちた。かつての相棒から「お前は詰めが甘い。勝ったと思った瞬間、ボロを出して負ける」と言われたことが頭をよぎる。俺より少し年上なだけで随分御託を並べてくれたが、俺より先にしくじって今は僻地の刑務所にいるはずだ。ざまあない。それに、まだ仕事は途中だ。自分...

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自作小説倶楽部10月投稿

『ハロウィンの小話』
「トリック・オア・トリート!」休日の静かな夕べを無粋なブザーで邪魔され、それでも老人ホームに居る父親がくたばった知らせかもと思ったので玄関のドアを開けました。そしてその言葉です。カボチャ頭のお化けに青白い顔の魔女にミイラ男、6、いや8人くらいいたかな。彼らが爛々と目を光らせて私...

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