仮想劇場『本棚の上手な使い方』
- カテゴリ: 自作小説
- 2021/05/23 21:51:06
あれは一昨日の夜の事だったか上等な雨と春濡れの匂い星座は分厚い雲の向こうで顔色を失って泣いていた
俺は書物に埋もれる毎日に飽きて少しだけ身を伸ばして窓の向こうを見ていた大人しく生きることにしている手痛い牙は胸の奥にしまったままで
本音だけで他人と対峙できればそれは幸せだろうか嘘や謙遜をひとつも持ち...
あれは一昨日の夜の事だったか上等な雨と春濡れの匂い星座は分厚い雲の向こうで顔色を失って泣いていた
俺は書物に埋もれる毎日に飽きて少しだけ身を伸ばして窓の向こうを見ていた大人しく生きることにしている手痛い牙は胸の奥にしまったままで
本音だけで他人と対峙できればそれは幸せだろうか嘘や謙遜をひとつも持ち...
何とはなく場末の一角を占拠し何とはない人々を眺める日々得るものなんて何もないのにそれでも身を置いて今を省みる
目的を忘れた2羽のカラスは往くあてのない片羽の番ガラス空を飛べたのは上手く歩けないからで決して神々によって優遇されたわけじゃない
欲しいものはいつだって空にあったそれでも空に捨てられるしか...
独りを感じずに済むのならそれでいいと彼は言った本質的な部分はさておき人ごみにまみれながら彼は生きる
心の支えを必要としていたわけでも同じ顔を持つ儚い人を探しているわけでもない自然体で存在するには世界があまりにも眩しすぎたから日陰者の烙印を背負ったほうが幾分も楽だと考えていた
泥水のなかで蓮は純粋な...
相も変わらずチャペルの庇に腰掛けちょっとだけ未来の事を考えている
晴天下の虚空と孤独昨夜の残り香に酔いながら梅雨の訪れを待ちわびる時間アジサイの咲く季節は嫌いじゃない雨はいつだって叙情的だ現実以上の現実として心の在処を映してくれる
何をしたくてこの町にいるのか何を成すためにこの町に残ったかそんな...
鳥の羽ばたきを何度も何度も見てはただ通り過ぎるだけのバスを見送り流れる会話に心奪われることなく詫びた教会で無駄に祈りを飛ばす日々が続く
救いといえば時折出逢う青い猫彼の発する真っすぐなセリフに一時だけでも自分を忘れられる事だ
こう見えて僕は人間観察というものをやった事がない観察したいと思える人に未...